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MLCC/高誘電系積層セラミックコンデンサ その3

MLCC/高誘電系積層セラミックコンデンサ その3

セラミックバインダー「グリーンシート」とは?

今回は内部電極パターンを印刷するグリーンシートの組成についてご説明させて頂きます。MLCCはグリーンシートにスクリーン印刷をしたものを積層し圧着後多数のチップに切断し最後に焼成しセラミック化します。MLCC/高誘電系積層セラミックコンデンサ製造プロセスの概要についてはこちらから

グリーンシート組成一覧

バインダーに用いる高分子組成物としては、積層セラミックコンデンサ用のスラリーのバインダーとして一般的に用いられるもので良く、PVB、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)等が利用でき、特に限定されない。また、高重合度の高分子組成物の重合度としては、1,200〜1,600、低重合度の高分子組成物の重合度としては、600〜900が好ましい。柔軟性のあるグリーンシートを作るには、ポリマーのTgは室温付近またはそれ以下が望ましい。ポリマーのTgを下げるにはアクリレート系の方が優れているが、一般的にアクリレート系ポリマーの方がメタクリレート系ポリマーよりも熱分解性が悪い。また水溶化するためにカルボキシル基を持つモノマーを多く含むこと、粉体との吸着が強固になることも熱分解性を悪くする要因である。非水系ポリマーを用いたグリーンシートと比べると、グリーンシート上に金属ペーストを印刷する際、濡れ性が悪く密着性が悪い。

ペースト組成

*バインダー樹脂の重合度が高いと、粘度が上がり、印刷適正が悪くなり、低すぎるとカスレやニジミの原因。
*内部電極用ペーストの有機ビヒクル中においてこれらの有機溶剤が65重量%未満では、エチルセルロースの溶解性が著しく悪くなるとともに、有機ビヒクルの粘性が著しく高くなりペースト作製時の作業性を悪化させる。80重量%以上が好ましい。
*BaTiO3比率:含有量が1重量%よりも少ないと、導電性ペーストと誘電体シートとの同時焼成時の焼結収縮差が生じ、含有量が30%以上の場合、導電性が低下し、静電容量が得られなくなる。
*誘電体グリーンシートに内部電極用ペーストが接したとき、誘電体グリーンシートに使用されているPVB樹脂と内部電極用ペースト中PVB樹脂を有機溶剤が溶解する為にシワや穴が生じる(シートアタック)。
対応溶剤:エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、イソボルニルプロピオネート、イソボルニルブチレートは、他に蒸発速度が速い為、印刷後の乾燥性が優れる。
*低沸点石油系の脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素などの溶剤を一部添加することによって蒸発速度を改善する試みもされているが、炭化水素系の溶剤は、ポリビニルブチラール樹脂をほとんど溶解しないだけでなく、エチルセルロースも溶解しない。

Niペースト用バインダー/水系か有機溶剤系かにより選定


エチルセルロース:チキソトロピー性があり、印刷時の糸引きが無い為、使われているが、熱分解性が低く、焼成時にカーボンが残存し、加熱残分が多い。
アクリル系樹脂:熱分解性に優れるが、チキソトロピー性が低い為、高粘度化すると糸引きが強く、低粘度化させると印刷時に滲みが出る。分解開始温度は低く、残渣は殆ど零である
PVB樹脂:幅広い有機溶媒だけでなく、水にも溶解し、難分散性材料でも低粘度・高固形分化を可能。分解開始温度が高く、また450℃での残渣が多い。糸切れ性、接着性が良好。
*生産に適しているのは温度に対する分解速度が穏やかな方である。分解開始温度と終了温度が近いと、ポリマーは爆発的に分解するため制御が難しいからである。
 バインダーの分解には主鎖でモノマー単位に分解するタイプと、側鎖で分解するタイプがある。主鎖で分解するものは解重合とも呼ばれ、残渣は殆どない。一方側鎖で分解するタイプは、カーボンの多いタール状となり高温でも分解せず、残りやすい。

分散材


*Ni紛末表面は、塩基性をしている為、陰イオン系界面活性剤が適している。
*分散剤は、セラミックス・金属材料の材料粉を溶媒と混合してスラリー化する際に用い、添加(100:0.01~0.5)により材料粉に速やかに吸着して粒子間の立体反発効果を付与し、優れた湿潤性及び分散性をもたらす。
*粘度経時安定化、増粘抑制。 静電容量のバラツキ低下、収縮率低下。

溶媒


*内部電極用ペーストの有機ビヒクル中の有機溶剤は65重量%未満では、エチルセルロースの溶解性が著しく悪くなるとともに、有機ビヒクルの粘性が著しく高くなりペースト作製時の作業性を悪化させる。80重量%以上が好しい。
*PVB用プロピレングリコール系:ジプロピレングリコールエーテルアセテート(シートアタック回避不十分)、ジプロピレングリコールメチルーn-ブチルエテール、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルプロピオネート、イソボルニルブチレート
*ターピネオール:誘電体PVBを溶解、膨潤させ、電極膜の穴や欠損誘発。(対応策:ジヒドロターピニルアセテートがあるが、乾燥性が悪い)

可塑剤


*可塑剤は、種々の成形用バインダーに対して高い相溶性とシート間の接着性、強度、熱分解性効果。     
*可塑剤がポリマー分子の接近を抑制し分子間を広げる。
*フタル酸エステル系は、R0HS規制対象

MLCC電気特性に関する用語集

1.高誘電率系(XR5,X6S,X7R等):高誘電率系コンデンサは、現在主にBaTiO3(チタン酸バリウム)を主成分とした強誘電体がで、自発分極(電場をかけなくても分極すること)を持ち、自発分極の向きを外部電界によって反転させることが出来る=静電容量として観測
しかし、外部から直流電圧を印加することによって、誘電体中の自発分極が電界の方向に束縛されるため、自発分極の自由な反転がしにくくなり、その結果、得られる静電容量はバイアスを印加する前に比べて低くなります。

2.温度特性記号/EIA規格別温度範囲と静電容量変化率:
C0G:-55°C~125°C 静電容量変化率/±30ppm/°C
X5R:-55℃~85℃   静電容量変化率/±15%
X6S:-55℃~105℃  静電容量変化率/±22%
X7R:-55℃~125℃ 静電容量変化率/±15%

3.DCバイアス特性:コンデンサにDC電圧を印加した時に実効的な静電容量が変化(減少)してしまう現象。
4.TCC:低温、高温による静電容量が低減する変化率。
5.キュリー温度:物理学や物質科学において、強磁性体が常磁性体に変化する転移温度、もしくは 強誘電体が常誘電体に変化する転移温度である。BaTiO3(チタン酸バリウム)は、130℃がピークで高い誘電率になる為、実用レベルの温度(常温~100℃)でも高い誘電率になるように、添加剤により調整。

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